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AI探究ラボ ── 自ら問いを立て、AIでカタチにする。

AIと学び

AIは、いつから学ばせればいいのか

AIは、いつから学ばせればいいのか

保護者から、「AIはいつから学ばせればいいか」という質問を受けることが増えている。この夏、その問いへの答えを示す出来事が二つ、同じ業界で起きた。初任給を月100万円にして新卒を採る不動産会社と、過去最高益を記録しながら新卒採用を減らす銀行である。

この記事の要点

  • 初任給を月100万円にする会社と、過去最高益でも新卒採用を減らす銀行。同じ夏に起きた、逆向きの二つの判断

  • 採用で分かれ目になっているのは、年齢でも学歴でもないとしたら、何なのか

  • 「トップ層だけの話」で片づけられない理由

  • 若手がベテランを追い越し始めている現場で、いま起きていること

  • その力は、いつ、どこで身につくのか

「AIは、いつから学ばせればいいですか」

保護者から、この質問をよく受ける。小学生のうちからか、高校からでも間に合うのか。たいていは、学ばせる時期の話として聞かれる。

答えを先に書く。時期の問題ではない。

そう考える理由を、この夏に起きた二つの出来事から説明したい。

同じ夏に、逆を向いた二つのこと

一つは、不動産開発の霞ヶ関キャピタルが、2027年4月入社の新入社員の初任給を月100万円にすると発表したことである※1。年収にして1400万円前後。約1300人の応募から、10人ほどに内定を出した※2。

もう一つは、銀行の新卒採用が減ることである。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループの2027年度の新卒採用が、5年ぶりに減る。理由はAIによる業務の効率化だと報じられている※3。

見落としてはいけないのは、業績が苦しいから減らすわけではないということだ。国内の大手銀行の2027年度の新卒採用計画は合計2180人で、前年より4.8%少ない※3。日銀短観(6月調査)でも、2027年度に入行する新卒採用者数は銀行業全体で前年度比マイナス2.9%となる見通しが示されている※3。新卒採用数が前年を下回るのは、5年ぶりである。

片方は、かつてない金額を積んで採る。もう片方は、採る数を減らす。

「不況だから減るのだろう」は、当たらない

銀行の採用が減ると聞けば、業績が悪いのだろうと考えたくなる。実際、3メガバンクの新卒採用は2010年代後半から23年度にかけて大きく減っている。あのときはマイナス金利で、店舗の統廃合が進んでいた。

今回は違う。業績は好調である。店舗の削減はこの5年も続いていたが、その間、採用はむしろ増やしていた。それが反転した。

それどころか、3メガバンクの2026年3月期の純利益は、合計で初めて5兆円を超え、過去最高を記録した※4。三菱UFJフィナンシャル・グループは、2026年7月に時価総額42兆円でトヨタ自動車を抜き、国内首位に立っている※5。金融機関が首位に立つのは、バブル崩壊後で初めてである。

過去最高益を出し、時価総額で国内首位に立った業界が、新卒の採用を減らす。これが、いま起きていることだ。

日本経済新聞の取材に対し、3行のうち1行はAI活用の影響を認め、業務効率化によって今後の採用数が減っていく可能性があると答えている※3。

理由はもう一つ挙げられている。若手が辞めなくなったことだ。

大卒の初任給は、金融業・保険業で2025年に26万6700円まで上がっている。2020年から4万6200円の上昇である※3※6。

福島県の東邦銀行では、2023年度に34.7%あった入行3年以内の離職率が、2024年度は16.9%まで下がった※7。鹿児島銀行は初任給を5年連続で引き上げ、2027年度は大卒28万5000円(2022年度比8万円増)とする一方、採用計画数は前年比24%減の110人とする※3※8。

AIで仕事が減り、人が辞めなくなった。どちらも、新卒に用意される席を減らす方向に働く。

減らすのと同時に、増やしている

ここを見落とすと、話を読み違える。

同じ銀行が、中途採用は増やしている。26年度の計画は前年比2.7%増の1300人。新卒でも、ITやグローバル、資産運用といった専門コースを設けている。

減っているのは「人数」であって、「必要とされる人」ではない。絞って採るという判断である。

年齢ではなく、何ができるか

霞ヶ関キャピタルの話に戻る。

内定した10人の内訳は、英ケンブリッジ大の学生、数理モデリングの研究者、金融工学のコンテスト優勝者、起業家、AI開発者である。同社が新卒採用を本格的に始めた理由について、採用を統括する矢口太一氏はこう説明している。「若手が年長者を上回る価値を出しやすくなった」。

実際、内定者の一人はインターンを始めて数日で、それまで手作業で計算していた設計図の作成費用を自動で概算するツールを作った。開発用地を買うかどうかの投資判断を助けるAIを作った内定者もいる。

入社後に育てた力ではない。持って入ってきた力である。

「うちの子の話ではない」と思ったなら

ここで多くの保護者が、これはトップ層の話だと感じる。その感覚は、半分正しい。

霞ヶ関キャピタル自身が、この採用を「世代のドラフト1位」と呼んでいる。1300人から10人。誰にでも起きていることと書けば、事実に反する。

しかしながら、話はそこで終わらない。同じことが規模を小さくして、あらゆる場所で起きている。

初任給を上げている銀行が、採用数まで増やしているわけではない。鹿児島銀行のように初任給を5年連続で引き上げてきた地方銀行がある一方で※8、メガバンクは新卒を絞りながら、中途と専門コースを増やしている。

待遇は上げる。頭数は絞る。専門性で採る。この三点セットは、月100万円ほど派手ではないけれど、はるかに広い範囲で進んでいる。

10人に入るかどうかの話ではない。絞られる側にいるか、絞った上で選ばれる側にいるか、という話である。

では、その力はどこで身につけるのか

内定者の経歴には共通点がある。学生のうちに、自分の関心を一つ選び、そこでカタチになるものを残していた。

研究、コンテスト、起業、開発。呼び名は違うが、やっていることの構造は同じである。

問いを立てる。調べて確かめる。カタチにする。人に渡す。

大学に入ってから始めた人もいるだろうし、もっと前から続けていた人もいるだろう。そこは公表されていないので、断定はしない。

ただ、このサイクルを何度も回した経験がなければ、インターン数日でツールは作れないだろう。

現場で見てきたのは、順番が入れ替わる光景だ

私自身、これまで採用と人材育成の現場で、多くの新卒と若手を見てきた。AIが台頭してから目にしたのは、一部の領域で、AIを使いこなす若手が、中堅・ベテランにもできなかったことをやってのける光景である。

これまで中堅・ベテランの価値は、経験から積み上げた知にあった。ところがAIは、知識をすでに備えている。それも、人間では蓄えきれないほどに。

ロジックの組み立ても人間より速く、抜けが少ない。おまけに24時間、疲れを知らずに働く。これを人間が単独で上回るのは、至難の業である。

経験の量で差がつく時代が、終わろうとしている。年齢や社歴が武器にならない場所では、若さは不利にならない。

AI探究ラボでは、どうしているか

私たちは、この一周を6回でひと巡りする設計にしている。1クラス6名。

グループ作業を主にせず、一人が一つの問いを最後まで通す。1周まわるごとに、成果物が1つ残る。

そこで育てたいのは、次の三つの力である。

思考力(Thinking)ーー問いを立て、筋道をつくる力。

技術力(Technology)ーーAIをはじめとする道具を、自分の意図どおりに動かす力。

構築力(Building)ーー頭の中のものを、人に見せられるカタチにする力。

この三つの力を、6回のサイクルで育てる設計を、私たちはTTBモデルと呼んでいる。三つのうち、どれか一つが欠けても機能しない。

問いがないままAIを使えば、出てきた文章を眺めるだけで終わる。問いがあってもカタチにできなければ、人には通らない。

AIは、以前なら何年もかけてようやく身につけられた技術を、数日単位で扱えるようにする道具である。速く進んで、遠くまで行けて、仕上がりも想像以上になる。ラボでは、その落差を体感させることも狙いの一つである。

そのうえで、AIだけで最終アウトプットをつくることはない。デジタルの作品でも必ず人の手を加えるし、AIで思考を広げたうえで、段ボールや紙のプロトタイプに落とすこともある。

AIは考えを前に進める道具であって、代わりに考える存在ではない。

本当に学んでほしいのは、AIではない

冒頭の質問に戻る。AIは、いつから学ばせればいいのか。

問いの立て方が違う、というのが私たちの答えである。

AIの使い方は、覚えれば済む。半年も経てば操作画面すら変わっている可能性もある。覚え直せばいいだけのものに、開始年齢を悩む意味は薄い。

覚え直しが効かないのは、もう一方である。何が気になるのか。なぜ気になるのか。

それをどう形にして、人に渡すのか。この力は、回した回数でしか積み上がらない。だから、始めた時点から時間が要る。

いつ学ばせるかではない、いま始めるかどうかである。


文=石黒 大洋(創業者)


FAQ

Q. 早く始めたほうが有利ですか。
A. 結論から言うと、早く始めたほうが身につきやすいと言えます。この力は、経験を重ねるほど育っていくものなので、スタートが早いほうがその分積み重ねも多くなります。

また、早いうちからこの力を育てておくと、当スクール以外の日常生活や社会の中でも、お子さま自身の「なぜ?」「どうして?」という好奇心や気づきが増えていきます。自然と自分で問いを立てて探究する姿勢が身につくほか、学校の総合的な学習・探究の時間の質も上がり、相乗効果でさらなる力の向上が見込めます。

Q. 家でChatGPTなどのAIを触らせているだけでは足りませんか。
A. お子さまが自分で触れているだけでは、十分ではないと考えています。AIの使い方(How to)を知るだけでは、本当の力は育ちません。この力は、お子さま自身が自分の「好き」や関心事と向き合い、本気で考え、カタチにし、振り返るという一連のプロセスを経験して初めて身につくものだからです。

当スクールでは、講師だけでなく、外部の自治体や教育機関、民間企業の専門家、さらには保護者や他のお子さまなど、多様な立場の人たちからフィードバック(講評)をもらう機会をつくっています。こうした多角的な視点や刺激のある環境を、ご家庭だけで用意するのはなかなか難しいのではないでしょうか。

Q. 中学受験や部活動との両立はできますか。
A. はい、無理なく両立いただけるスケジュールに設計しています。週1回90分で、19時以降の遅い時間帯の回もご用意していますので、受験勉強や部活動と重ねて通いやすい環境です。これからの高校・大学受験は、一般入試か推薦入試かの二者択一ではなく、両方の準備を並行して進めておくと、志望校の選択肢や受験方法の幅が広がります。月謝も24,800円と、推薦入試特化型の塾と比べて短時間かつ割安ですので、一般入試の勉強と併用しやすい設計にしています。

Q. 新入社員がインターンや入社してすぐに結果を出せるのは、なぜですか。
A. 問題解決能力は、年齢に左右されない汎用的なスキルだからです。起業家や経営コンサルタントが若くして結果を残せるのと同じ理屈で、大きな問いを小さな問いに分解し、一つずつ解決を積み重ねることで身につきます。求められるのは年齢ではなく、問題解決の機会をどれだけ経験してきたかです。実務経験を重ねても、問題解決そのものに携わる機会がなければ、このスキルは育ちません。なお、考えをカタチにする実装力は、問題解決能力とは別に、やり抜く経験の中でしか育ちません。肩書きや職種で語れる時代は終わり、個人のスキルと経験そのものが問われる時代になったと考えています。

Q. 学校の探究の授業だけでは不十分なんですか。
A. 学校の授業だけで、完全に網羅し、深く実践するのは難しいと考えています。これは先生の力量の問題ではなく、構造的な課題です。

2022年度から施行された学習指導要領で、国語科に「古典探究」(4単位)、地理歴史科に「地理探究」「日本史探究」「世界史探究」(各3単位)、理数に「理数探究基礎」(1単位)「理数探究」(2〜5単位)といった、「探究」を冠する科目が新設されているのは事実です※9。ただし、これらはすべて選択科目で、必履修ではありません。文系・理系などの履修コースによって、生徒がどの科目をどれだけ履修するかは大きく変わります。

また、文部科学省は、これらの教科の探究科目と、必履修である「総合的な探究の時間」とを、はっきり区別しています。「総合的な探究の時間」に求められているのは、教科の枠を超え、実社会・実生活の複雑な文脈にある、唯一の正解が存在しない課題に、複数の教科の見方・考え方を総合的に働かせて取り組み、「最適解」や「納得解」を見いだしていく学びです※10。一方、教科の探究科目は、その教科固有の見方・考え方を深める、教科の枠内の学びと位置づけられています。

この、教科をまたいだ自由な課題設定型の探究に充てられる時間は、中学校の「総合的な学習の時間」が3年間で190時間※11、高校の「総合的な探究の時間」も標準3〜6単位(105〜210時間)にとどまります※9。加えて、先生ご自身が探究学習を経験されていない場合や、学校の外の社会(省庁や自治体、企業など)との接点が少なく、具体的な進め方をイメージしづらいという面もあります。当スクールでは、年間約72時間をカリキュラムに充てているほか、長期休みには起業家体験やデザイン思考などの季節講座もご用意しています。講師はいずれも学校や社会での経験が豊富ですので、多様な視点からのアドバイスや接点を持っていただけます。

脚注

※1 日本経済新聞「霞ヶ関キャピタル『才能』を採用、初任給100万円 AIや起業、秀でた10人」(2026年8月)/同「初任給は月100万円、不動産の霞ヶ関キャピタル 27年4月新卒から」(2026年7月)
※2 テレビ朝日系(ANN)「『初任給月額100万円』に応募1300人 不動産コンサル会社 すでに10人が内定」(2026年8月)
※3 日本経済新聞「銀行新卒採用、来年度5年ぶり減 AIで業務効率化 売り手市場に転機」(2026年8月)
※4 時事通信「3メガ銀の純利益、初の5兆円超え 金利上昇で過去最高――26年3月期」(2026年5月15日)
※5 日本経済新聞「三菱UFJFG、時価総額42兆円で初の首位に 金融機関でバブル後初」(2026年7月)
※6 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」(金融業・保険業の新規学卒者の所定内給与額、2026年公表)
※7 ニッキンONLINE(日本金融通信社)「銀行界、若手離職率 改善の兆し キャリア支援で10%台も」(2025年1月15日)
※8 株式会社鹿児島銀行「初任給の引き上げ方針について」(2026年2月13日ニュースリリース)/南日本新聞デジタル「鹿児島銀行が初任給を一律1万5000円増額、大卒は28万5000円 2027年度、5年連続の引き上げ」
※9 文部科学省「平成30年改訂 高等学校学習指導要領 各学科に共通する教科・科目等及び標準単位数」(古典探究:4単位・選択科目、地理探究/日本史探究/世界史探究:各3単位・選択科目、理数探究基礎:1単位・選択科目、理数探究:2〜5単位・選択科目、総合的な探究の時間:3〜6単位・必履修、いずれも1単位=35時間換算)
※10 独立行政法人教職員支援機構(NITS)「新学習指導要領の改訂のポイントと学習評価(高等学校 総合的な探究の時間)」文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・加藤智
※11 文部科学省「中学校標準授業時数」(学校教育法施行規則 別表第2、総合的な学習の時間:第1学年50時間・第2学年70時間・第3学年70時間、数学:140時間・105時間・140時間、外国語:各学年140時間)

© to the Best. | AI探究ラボ

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