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AI探究ラボ ── 自ら問いを立て、AIでカタチにする。

総合型選抜・推薦入試

2026.08.21

AIは、いつから学ばせればいいのか|初任給100万円と、過去最高益の銀行が採用を減らした夏

AIは、いつから学ばせればいいのか|初任給100万円と、過去最高益の銀行が採用を減らした夏

「AIは、いつから学ばせればいいですか」

保護者の方からよく出る質問である。中学生になったら。高校生になったら。受験が終わったら。だいたい、そういう答えを期待して聞かれる。

この夏、その質問への答えが、二つのニュースの形で出た。

同じ夏に、逆を向いた二つのことが起きた

一つは、不動産の霞ヶ関キャピタルが、2027年4月入社の新卒から初任給を月100万円にすると発表したことである。年収にして1400万円前後。猄1300人が応募し、内定はおよそ10人だった**※1**。日本経済新聞の見出しは「『才能』を採用」で、AIや起業に秀でた人材を対象としている**※2**。

もう一つは、銀行の2027年度の新卒採用が、5年ぶりに減ることである。理由はAIによる業務の効率化だと報じられている**※3**。

見落としてはいけないのは、銀行が苦しいから減らすのではないことだ。3メガバンクの2026年3月期の純利益は、合計で初めて5兆円を超え、過去最高を記録した**※4**。三菱UFJフィナンシャル・グループは、2026年7月に時価総額42兆円でトヨタ自動車を抜き、国内首位に立っている**※5**。金融機関が首位に立つのは、バブル崩壊後で初めてである。

過去最高益を出し、時価総額で国内首位に立った業界が、新卒の採用を減らす。 これが、いま起きていることだ。

片方は、新卒に破格の金額を払う。もう片方は、業績が最高でも人数を減らす。逆を向いて見えるが、この二つは同じ一つの判断である。

年齢は関係ない。代替できるなら人数も要らない

AIを使って付加価値を生める人間は、年齢に関係なく評価する。AIで代替できる仕事は、業績がよくても人数を減らす。 二社が同時に示したのは、この一行である。

AIが代替できる範囲は、広がり続ける。去年できなかったことが今年できる速度で、境界線は動く。いま代替されない側に見える仕事が、五年後も同じ位置にある保証はない。

ここで、確かめておきたいことがある。月100万円の内定を取った璑10人は、どこでAIを学んだのか。

学生時代である。学生のうちに問いを立て、AIで形にし、それを実績として積み上げてきた。だから、社会に出る前の時点で評価された。

彼らが歩いた道は、いまの教育課程に入っていない。大学・大学院まで含めても、その道を通る学生はごく少数である。学校が悪いのではない。カリキュラムに、そもそもその項目がないのである。

「トップ層の話でしょう」は、通らない

この話をすると、必ずこう返ってくる。うちの子はトップ層を目指すわけではないから、関係ない。

その反論は通らない。理由は単純で、他の会社が置かれている状況も、まったく同じだからである。

AIで代替できる業務が増えれば、どの会社も同じ計算をする。この評価の仕方が他社に広がらないと考えるほうが、不自然である。

証拠はすでに出ている。これまでトップ層の学生を大量に採り続けてきた銀行が、採用を減らす側に舵を切った。 入口がいちばん広かった業界で、先に人数が動いたのである。

大学入試の総合型選抜や、高校入試の推薦で広がってきた「点数よりも、考えた過程と実績を見る」という評価は、就職の市場にも来る。いや、もう来ている。

現場で見てきたのは、順番が入れ替わる光景だ

私自身、社内外で多くの新卒入社と若手社員を見てきた。AIが台頭してから目にしたのは、若手のAIを使った仕事ぶりが、中堫・ベテランをはるかに凌駕する光景である。

これまで中堫・ベテランの価値は、経験から積み上げた知にあった。ところがAIは、知識をすでに備えている。ロジックの組み立ても人間を超える。おまけに24時間、疲れを知らずに働く。これを人間が単独で上回るのは、至難の業である。

経験の量で差がつく時代が、終わろうとしている。年齢や社歴が武器にならない場所では、若さは不利にならない。

AI探究ラボでは、どうしているか

AI探究ラボは、1期1クラス6名である。1周は6回。1回目と3回目は全員に向けて教える回で、残りの4回は一人ずつ見る時間にあてている。90分のうち40分は、自分の制作の時間である。教わる時間より、手を動かす時間のほうを長く取っている。

進め方はTTBモデル。Thinking(問いを立てる)、Technology(道具を選ぶ)、Building(小さくつくる)、Presentation(見せて、聞く)。この四つを、1周ごとに最後まで通す。1周まわるごとに、成果物が1つ残る。

扱う対象は、周を重ねるごとに外へ広げる。最初は自分と家族のこと。次に友人・知人。そこから地域、社会へ。半径を一気に広げない。近いところで一度通した型を、遠いところで使い直す。外部のアワードにも挑戦する。教室の中で完結させないためである。

AIは道具として使う。かつては何年もの技術習得が必要だったことを飛び越えて、思いついたその手でカタチにできる。速く進めて、遠くまで行けて、仕上がりも想像以上になる。「やりたい」と「できた」の距離を、いちばん短くできるからである。

そこで鍛えるのは、人を動かす力だ。なぜやりたいのかを説明する力、つまり理屈。そして頭の中のものをカタチにする力、つまり実物。この二つを持った人間を、大人は止められない。止める理由がなくなるからである。単に口が上手くなることではない。

積み上げたものは、活動実績証明書(QRコード付き)として残す。総合型選抜や推薦入試の場面で使える。ただし直結するとも有利になるとも書かない。合否を約束できる立場にないからである。

そのうえで、引き受けないことを断っておく。AIの使い方講座はやらない。成績も上げない。

本当に学んでほしいのは、AIではない

タイトルに「AIは、いつから学ばせればいいのか」と書いた。けれど、本当に学んでほしいのはAIではない。

問いを立て、カタチにし、人前で話し、反応を受け取って、また立て直す。この一連の体験そのものである。そして、それを何周も積み上げた先に残る、自信である。

AIの使い方は、来年には変わる。積み上げた実績と、そこから来る自信は、変わらない。

答えを言う。いつ学ばせるかではない。いま始めるかどうかである。

脚注

※1 テレビ朝日系(ANN)「『初任給月額100万円』に応募1300人 不動産コンサル会社 すでに10人が内定」(2026年8月)

※2 日本経済新聞「霞ヶ関キャピタル『才能』を採用、初任給100万円 AIや起業、秀でた10人」(2026年8月)/同「初任給は月100万円、不動産の霞ヶ関キャピタル 27年4月新卒から」(2026年7月)

※3 日本経済新聞「銀行新卒採用、来年度5年ぶり減 AIで業務効率化 売り手市場に転機」(2026年8月)

※4 時事通信「3メガ銀の純利益、初の5兆円超え 金利上昇で過去最高――26年3月期」(2026年5月15日)

※5 日本経済新聞「三菱UFJFG、時価総額42兆円で初の首位に 金融機関でバブル後初」(2026年7月)

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